新墾の此の丘の上
序
新墾の此の丘の上 移り來し二歳の春
緑なす真理欣求めつつ 萬卷書索るも空し
永久の昏迷抱きて 向陵を去る日の近きかな
追懐
一 旗薄野邊に靡きて 片割れの夕月落ちぬ
燦きの星は語らひ 微香る大地囁けど
玉の緒は繋ぎもあへず ひたぶるの男の子の苦悩
三の城燈も消えゆけば 逝きし友そぞろ偲ばる
二 ひた寄する沈倫の中を 甦生る制覇の戰
祝歌ふ若人の頬に 一絛の涙滴す
望月の盈れば虧くる 嘆きにも橄欖の梢
仰ぎつつ光栄ある城を 動揺なく守り行かんかな
三 理智咲けるラインのほとり 藝術生すローマの丘に
東帝國の精神の文化 見よ今し流れ出づるを
柏蔭に憩ひし男の子 立て歩め光の中を
國民の重き責任負ひ 五大洲に雄叫びせんか
四 霞立つ紫の丘 公孫樹道黄葉づる下を
彷徨ひし嘆きの胸に 久遠の思索はひそむ
失はじ我等が衿侍 護り来し傳統の法火
浄らかに燃え盛る時 継ぎゆかな來む若人に
結
思出は盡ず涌きくれ 逼り來ぬ別離の刻は
玉蜻の夕さり來れば 暮れ残る時計臺めぐりて
集ひ寄る和魂の群れ 壽の酒掬まんかな
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